APO-SUMMICRON-SL F2/35mm ASPH.

LeicaのLマウントレンズのAPO-SUMMICRON-SL F2/35mm ASPH.が発表されました。
Apo-summicron 35
APOを冠するレンズは特別なレンズなのですが、このLマウントAPO Summicronレンズ群の面白さは35mm、50mm、75mm、90mmが全て同じくらいの大きさという点です。

L lenses
右の4本のレンズがAPO Summicronですね。
Leicaの中で『APO』を冠するレンズは特筆する描写力を持つレンズたちです。広角レンズから望遠レンズまで、SL用のSummicronのLマウントレンズは全てAPOです。これはアポクロマートの意で、すなわち三つの波長で色補正が為されている事を指します。一般的に異なる波長は異なる屈折率を持つので、全ての波長を一点に集光するのは至難の業です。アポクロマートそのうち三つの波長(青色近傍と緑色近傍と赤色近傍が一般的です)が一点に集光するレンズです。ちなみに、二つの波長が一点に集まるのをアクロマートと言い、四つ以上の波長が一点に集まるのをスーパーアクロマートと言います。
永くに渡り、APOレンズは望遠レンズが多かったのですが、最近になって標準レンズも増えて来ました。古くは1975年のAPO-TELYT-R 180 mm f/3.4、最近では遂に2012年にAPO-Summicron-M 50 mm f/2 ASPH. に標準レンズにもAPOの付くレンズが開発されました。APOの付くレンズを作るためには、単に異常分散ガラスがあればいいわけではありません。レンズの組み立てや偏芯調整も含むのです。
そしてここに準広角の35mmレンズにもAPOを冠するレンズが開発されたのは、正直驚きです。
ここからは私の想像ですが、Leicaでは単に上記の三つの波長補正をAPOと呼んでいる訳ではないと思います。APOとは軸上色収差の補正ですが、極端に言えばそれだけが補正されていればアポクロマートレンズとなる訳です。しかし、Leicaでは軸上色収差の補正だけはなく、APOの軸上色収差補正に見合った水準のその他の収差の補正が必要なのだと思うのです。倍率色収差、色に寄らないザイデルの5収差の球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差が全てAPO水準で補正されていないとAPOを冠することはできないのだと思います。その中で、軸上色収差が補正しやすい広角レンズが、その他の収差までAPO水準になったのは凄いと思います。焦点距離が長くなるレンズは球面収差と軸上色収差が大きくなりやすい傾向ですが、広角レンズは倍率色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差が大きくなりがちで収差補正しなければいけない項目が増えるためです。更に得てして異なる収差を同時に補正できないため、設計方針は極めて難しいと思います。
LマウントのAPOレンズは回折限界まで出ているのでしょうか。凄い光学設計能力とそれを実現できる光学組立能力です。

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