Fujifilm XF カメラの変遷(2019)。

富士フイルムのデジタルカメラ参入はXF100で始まりましたが、ある種の博打だったそうです。XF100が売れなかったらそのままデジタルカメラ事業は無くなる予定だったそうです。
結果的には、その後にX-Proでレンズ交換式デジタルカメラを開発する事になるのですが、今やXシステムはたくさんのカメラがありますね。

X-Pro2 Graphite


その2012年発売の初代X-Proですが、電子と光学の双方の機能を併せ持つハイブリッドファインダーは魅力的でしたが、AFの性能やセンサーの配列については少し疑問がありました。
2014年になると、一眼レフスタイルのX-T1が発表されかつてのS-Proシリーズっぽいカメラが発売されます。
そこから2019年現在、およそ5年で一眼レフスタイルのカメラだけでもX-T#が3機種、X-T#0が3機種、X-H1とX-T100まであります。
一眼レフスタイルのカメラの方が開発スピードが速いと感じるのは私だけでしょうか。
最新のカメラはX-H1、X-T3、X-T30、そしてX-T100です。このAPS-C群の評価がなかなか難しいのです。X-Pro2は近々アップデートされるのでしょうか、その一機を除いて下級機から上級機に並べると、大体下記のようになります。
X-T100
X-T30
X-T3
X-H1
値下げがあったので価格的にX-H1<X-T3ですが、機種としては手振れ補正とかバッテリーグリップがあるので上位機種です。

ここに富士フィルムのAPS-C機のジレンマが現れているのだと思います。フルサイズの低価格機種と比較すると、X-H1は数万円高価になってしまうのです。X-T3もX-T2より安く発売しています。
本当に高級機種ともなると、ラージフォーマットのカメラがあったり、高性能のフルサイズがあったりします。かつ、フルサイズの最安価機種や型落ち品もどんどん値下がりしています。APS-Cの高級機はこの高級フルサイズ機種と安価なフルサイズ機種の板挟み状態だと思います。
更に下は今やスマートフォンであり、かつてのコンパクトカメラではありません。スマートフォンはコンパクトカメラを喰ってしまいましたが、その矛先は今や1型カメラの廉価機に及んでいると思います。そしてその勢いは止まることはないでしょう。
多くの人は10万円(『実質0円』ではないです)で手に入るスマートフォンのカメラで満足しています。高性能フルサイズ機種が欲しければ、20数万円で手に入ります(Nikon Z6やSony A7mk3など)。しかもそれらより安価なフルサイズ機も20万円以下であります。かたや、富士フィルムはNikonの一眼レフ(D500など)とも競合しています。
何が言いたいかと言うと、一眼レフスタイルの機種で富士フィルムが競争できる価格帯が非常に狭いと言うことです。いくら富士フィルムが他事業があるとは言え、もう少しライナップを洗練する必要があるかもしれません。
現在だと、X-A5、X-E3、X-T100、X-T30、X-T3、X-H1、そしてX-Pro2がAPS-C機であるXF機のラインナップです。大体5万円から20万円の価格範囲で、ラインナップとしては十分ですね。しかもこれらのカメラは『スマートフォンからフルサイズ機の間』の範囲として認識されていますので、マーケティング的にも狭い範囲でそれぞれのカメラの強みや独自性をどう説明すればいいのか悩みます。選択肢が多いと機種を絞れなくなるかもしれませんしね。
更に、富士フイルムはこれらのカメラの中では高価なカメラも多く、『スマートフォンからフルサイズ機の間』の範囲では高機能高価格寄りの製品が多いです。実際に多くの分野で製品の種類の過多が見受けられ、購入に踏み切れないかどのカメラを選んでいいかわからない人が意外に多いのではないかと思います。
7万円、9万円、12万円、15万円の変遷が現実的でしょうか。『スマートフォン側』と『フルサイズ側』の価格帯を考えたらAPS-C機はこのくらいかもしれません。5機種も入らないのではないでしょうか。少なくとも、この価格帯の外の機種は特殊な立ち位置がないと販売は難しいのではないでしょうか。
X-H1を15万円くらいとしたら、例えばD500の少し下位モデルと考える事ができます。X-H1は造りと手振れ補正はいいですが、AF・フレームレート・望遠レンズラインナップでD500に負けています。折角のAPS-Cセンサーなので、コンパクトな望遠レンズを拡充したらいいかと思うのですが、今の富士フイルムの望遠レンズラインナップではネイチャーフォトやスポーツフォトを撮る方々には物足りないかもしれません。
一方で、X-T100は5万円を切っており、ズームレンズキットでも5万を少し超える程度です。機能的に見劣る部分はあるものの、他のメーカーで5万円を切る機種でこれ程高機能なカメラはなかなかないのではないでしょうか。
そしてそのモデルの上位機種のX-T30もなかなかのものです。APS-C機のサイズ、大きさと重量が成せる業です。
Fujifilm X-T30
フルサイズの廉価機種がAPS-C機の高級機種の上位か同列にあるとすると、APS-Cの高級機種は明確な優位点がないと売り込みが難しいですね。例えばNikonのD500は明らかにD5の廉価版です。その延長線上の優位性を辿ると、レンズを含めたシステムのコンパクトさだと思うのです。
X-T30は小さくて軽く、かつ高機能です。コンパクトで高機能なレンズと合わせれば、最適なトラベルカメラとなりそうです。スマートフォンより明らかに高画質な写真が撮れ、フルサイズ機の重さも価格も軽減されています。F2の単焦点数本でいいという方も多いかもしれません。
X-T3とX-H1ですが、双方とも一眼レフ規模のサイズです。造りの質を上げれば大きく重くなりがちです。これらのカメラを持つ目的はフルサイズ機を持つものと同じです。AFが速く、EVF/OVFが鮮明だとか、トップクラスのパフォーマンスを求めます。残念ながら、高機能になればなるほど、カメラの販売台数はピラミッドのようにどんどん少なくなっていきます。20万円を超えるクラスでは、ほとんどの方がフルサイズ機で得られる機能で満足すると思います。また、このクラスのフルサイズ機と競争できる解像度と明るさのレンズはAPS-Cでも大きくなってしまい、サイズや重量のアドバンテージがなくなります。X-T3やX-H1をSonyのA7mk3やNikonのZ6と比べて大きなアドバンテージはあるのでしょうか。これらのフルサイズ機がどんどん安価になれば尚更です。X-T4がX-T3よりも安くなっても驚きません。
とは言え、富士フイルムのAPS-C機のラインナップはなかなかいいです。レンズのラインナップも望遠レンズの物足りなさを除いて良いです。他のAPS-C機メーカーよりも充実したラインナップです。
APS-C機で一般的な写真を撮る方には富士フイルムはオススメです。
他社と比較すると、一眼レフのAPS-C機は廉価版しかなくレンズのラインナップもそこそこでしかありません。レンズのラインナップはフルサイズ機に集中しています。
キヤノンのミラーレス一眼はコンパクトを売りにしており、自社の一眼レフAPS-C機と競合しないような製品戦略です。造りもそこそこでレンズのラインナップもそこそこです。
SonyのAPS-C機Eマウントは、デザインがひとつで、レンズのラインナップもフルサイズ機に重きを置いているように感じます。更に、富士フイルムのレンズの方が性能が高いです。
なので、APS-C機で本気で写真を撮りたい方には富士フイルムがオススメです。でもそんな方はどれ程いるのでしょうか。APS-Cセンサーにこだわりがあり、フルサイズセンサーに興味のない人は一握りだと思います。
そうなると大きくて重いX-T3やX-H1よりも、断然X-T100やX-T30を勧めたくなります。安価で性能のコストパフォーマンスが高く、コンパクトで軽量なカメラシステムです。軽量で性能の高い単焦点レンズも豊富です。廉価版と言われるカメラも高級機と同じセンサーを搭載していたり、その差は縮まっていると思います。また、廉価版の後継機は往々にして前モデルよりも高性能です。
富士フイルムは小さいマーケットサイズ(高級APS-C機)をマスターした形だと思います。
ところで、日本の三大サードパーティーレンズメーカーのシグマ・タムロン・トキナーですが、XFマウントのレンズが少ないですね。ZeissのTouitが一時期ありましたが、今新規開発されているものはなさそうです。それだけ高性能なフジノンレンズが多いという事かもしれませんが。そこに富士フイルムの良さを見出すのもひとつの選択だと思います。1+1が2以上と感じる事もあるかもしれません。

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