光学設計のサイトを始めました。

最初の記事は、『(Excel等の)表計算による光学設計の手引き』というタイトルで執筆しました。2万4000ワード、印刷したら100ページの大作です。

Pencil of Rays

この手引きでは光学の基礎を一部紹介していますが、教科書でも調べられるその多くの数式を省き、実用的な内容にしてみました。
100年以上前の手計算の時代のレンズ設計方法である光線追跡方法を見直し、深堀しています。光線追跡による収差の計算もしています。
そして、実際のレンズ設計を1枚、2枚、3枚のレンズ構成で実践しています。
私はレンズ設計を生業としていますが、ほぼ全てのレンズ設計を光学設計ソフトで行っております。これらのソフトは多機能かつ高機能ですが高価でもあり、多くは会社支給で使用している方が多いと思います。
光学設計をソフトから入ってしまうと、ともすれば「ソフトウェアの達人」となりかねなく、100年以上に渡る光学設計の歴史とその際に培ってきたノウハウを見失いがちです。
それではあまりにももったいないです。

レンズ設計はパソコンの能力で無理くり性能を上げようとしてもなかなかうまくいかず、深い思慮を必要とする反面、経験による閃きも重要な、一筋縄ではいかない仕事であり、学問でもあります。
収差を取り除くためにレンズ構成を考える必要がありますが、トリプレットひとつ取っても、大変な思考をがなされています。レンズ数が多いからと言って性能が良くなるわけでもなく、よく考えて設計をします。
システマチックに光学設計できる光学系はなかなかなく、過去の経験を必要とするために、レンズ設計の成り立ちを理解すると仕事がそれだけ楽になると考えます。
昔の達人が手計算でやっていた計算を、Excelなどの表計算ソフトを行えば手間が省けます。それこそ、戦後の日本のカメラが発展し、ドイツと競え会えるレベルの光学設計を支えたのは、そろばんで光線追跡の計算をする女性が大手レンズメーカーの光学設計の部署に数多くいたからです。
Excelなどの表計算ソフトで数式を連立で立てれば、レンズの枚数に相応する光線追跡が可能です。その際に、光学設計ソフトウェアでは得られにくい、光学面毎の細かな性能が自動的に計算もできるのです。
執筆した手引きの付録として、実際に使用したExcelとGoogle Sheetsをダウンロードできるようにしており、計算方法を体験できます。現代のレンズ設計では3枚レンズはあまりないかもしれませんが、例えば、最先端のズームレンズの部分的な解析に使えると思います。レンズ設計の歴史を知ると共に、レンズの体系図を知るために使えるとも思います。
英語で書いているのですが、何ヶ月もかけて仕上げました。誰かの役に立てれば幸いです。
Ultimate Guide to Lens Design Using the Classic Spreadsheet Method
GR019662

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